考える冒険

※「信ずることと、知ること。」から引っ越してきました。

【マチナカ読書会】生きづらい明治社会~②第1章 突然景気が悪くなる

こんにちは。

松沢裕作さんの『生きづらい明治社会』(岩波ジュニア新書)を、ようやく第4章まで読みました。推薦してくださった方の言う通り、第4章はとてもおもしろかったです。しかし、今日のところは慌てずに、第1章を中心に考えていきたいと思います。以前書いたものは、以下にありますので、ご興味がありましたら参照なさってください。

 

mori-to-seiza.hatenablog.jp

 

第1章 突然景気が悪くなる―—松方デフレと負債農民騒擾

以下、小見出しに連番を振って、閲覧に役立てたいと思います。なお、「 」で括っている部分は、本文からの引用(=丸写し)となります。

  1. 景気変動
    1. 世界恐慌(1929年)やリーマン・ショック(2008年)など。
    2. 「突然の不景気はそうした人びとの生活を吹き飛ばしてしまうわけです。やはりなんとも不条理な話です」
  2. 松方デフレ
    1. 景気の変動を画期として、明治社会の仕組みができ上っていく。
    2. 1881~1886年の松方デフレーション(松方デフレ)。大蔵卿(=現在の財務大臣松方正義の政策。
    3. 大隈重信の積極財政(近代的工業の振興など。紙幣を増刷)によるインフレーションからの転換。この時期、農村は好景気に沸いていた。
    4. 1877年(明治10年)、不平を持っていた士族らの反乱(西郷隆盛らによる西南戦争)のための軍事費調達 → 紙幣の増刷。
    5. 2.5%の地租を基本とした税制(=税の増収が見込めなかった)のための財政難。
    6. 1881年大隈重信失脚。明治14年の政変。松方による緊縮財政への転換。インフレーションの抑制策と増税(醤油や酒にかける間接税など)。
  3. 松方デフレの影響
    1. 「その時代、そのなかで生きてきた一人ひとりの人間にとって、松方の経済政策が幸福をもたらしたかどうかというのとはまったく別の話です」
    2. 物価の突然の下落、景気の悪化。1881~82年に急激に下がり、農産物は84年、工業製品の下落は86年まで続く。
    3. 著しかった繭の価格の下落。直前まで事業拡大をしていた農家が多く、土地を失った小作人と、土地を得る地主とに分離=地主制の始まり。
  4. 負債農民騒擾(そうじょう)
    1. 負債の減免や猶予を迫った一部の農民=「負債農民騒擾」。
    2. 1883~85年に64件が集中。養蚕業が盛んだった群馬・埼玉・神奈川・静岡の各県で多発。「武相困民党事件」など。
  5. 江戸時代の習慣と明治の制度
    1. 「このような事件がおこるより十数年前の江戸時代には、農民が土地を失うようなことはできるだけ避けなければならず、土地を失いそうな農民に対しては配慮をしなければならないという考え方がある程度広がっていたからです」
    2. 村請制 困窮者の分を、村全体で肩代わりする村単位での連帯責任 → 土地を失って村を去る者がでないような配慮が全体の利益だった。
    3. 「つまり、借金をかかえた農民たちは、江戸時代以来の習慣にもとづいて要求を出したのですが、明治時代の新しい制度のもとでは、お金を貸した側の目には、それは単なる身勝手としか映らなくなっていたのです。このような、二つの価値観のぶつかり合いから生まれたのが負債農民騒擾でした」
  6. 須長れん造(さんずいに「連」)の怒り
  7. デフレーションという不条理
    1. 政府の思惑・都合で経済政策が変更された → インフレがデフレに=農民の困窮。
    2. 「まだ議会や選挙がない時代、政府が国民の支持率をあまり気にする必要がなかった時代だからこその政策といえるかもしれません」
    3. 「不条理に巻き込まれた須長れん造の怒りは、私たちにとっても、決して他人事ではないのです」

まとめ・感想

  1. 政府の恣意的な政策変更によって起きた景気の変動に巻き込まれたことの不条理をどう考えるのかがポイントだと思う。個人の思惑や、能力を超えているところをどうするのか。
  2. 明治維新」という激動から、十数年というタイミングでは、まだ社会が落ち着きを取り戻していないということ。

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今回の「第1章」分については、以上といたします。お読みになっている方の参考となるようでしたら幸いです。もちろん、「正しい読み方」を提示しているわけではありませんので、多様なご意見を、多角的に相互照射できるような会を持てるといいなと考えています。なにとぞよろしくお願い申し上げます。最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!