考える冒険

※「信ずることと、知ること。」から引っ越してきました。

【レジュメ】24/01/02「100分de宗教論」を視聴して

こんにちは。

24/01/02(火)に、Eテレで「100分de名著」のスペシャル編として、「100分de宗教論」が放送されました。今回のエントリーは、1/11(木)21時からのclubhouseルームに供すべく作成いたしました。お読みいただき、ご参加を検討くださいますと幸いです。

www.nhk.jp

 

採用されたテキストと解説者

1)フェスティンガー 『預言がはずれるとき』(釈徹宗)

2)ニコライ 『ニコライの日記』(最相葉月)

3)杉本五郎 『大義』/城山三郎 『大義の末』(片山杜秀)

4)遠藤周作 『深い河』(中島岳志)

1)『預言がはずれるとき』

1950年代のアメリカで、外星人から「洪水で人類が滅びる」という「メッセージ」を受け取ったという婦人の元に形成されたコミュニティへの参与観察に基づいた著作。その預言が当たらなかった時、コミュニティの結束はかえって強くなったことについて、「認知的不協和」理論で解説されていました。また、コミュニティへ参加した大学教員の父親を持つ娘の行動から、今日言うところの「宗教二世」的問題も視野に入っていたと言います。

2)『ニコライの日記』

焼失されたと考えられていた、明治期日本に滞在した正教の大主教・ニコライの貴重な手記です。ニコライは、地域地域の風俗に配慮しての布教を心がけるよう指示していたとのこと。また、明治期には、カトリックやプロテスタントの方が、日本では歓迎されていたことが綴られています。ことに、プロテステントは資本主義の勃興期であったことからも、親和性が高かったと番組では指摘されました。

3)『大義』『大義の末』

中国へ出征した一軍人の家族宛ての手記が公刊され、130万部という大ベストセラーになったことが指摘されました。真宗の信徒でありながら、天皇への帰一を叫び、それがやがて日本中で受け入れられていくさまが不気味でした。

4)『深い河』

最晩年の遠藤の重要作品です。主人公が乗り合わせたインド・ツアーには、さまざまな「宗教的」動機を持った人々が居合わせていました。

メモ

  1. 『深い河』『ニコライの日記』は、かろうじて著作名のみ知っていたものの、全体としてはどんな展開となるかは全く想像できませんでした。
  2. 初登場となる最相さん、片山さんに期待大でした。
  3. 「認知的不協和」理論の由来がうかがえたのはよかったと思います。また、ウェーバーが言う「苦難の神義論」(信義論か?)との関連を深めていきたいと考えました。
  4. 「内なる老若男女を育てる」(釈徹宗)=相反する要素を「敢えて」内側に抱え込むことが大切だという指摘は重要だと思いました。
  5. 明治15(1882)年に至っても、子殺しなどの「前近代的」習俗が残存していたことが紹介されました(『ニコライの日記』)。
  6. 「一君万民」と「万民祭司」が親和的であったとされました(中島岳志)。
  7. 正教の「霊性」=内在する聖性(中島)。
  8. 日露戦争(1904-05)に直面したが、「日本のために祈りなさい」としたニコライ。
  9. ソ連時代に抑圧されていた宗教だが、ソ連末期にはカルトが跋扈し、ロシアとなってからは権威的なものとして復権した(釈)。
  10. 明治30(1897)年時点で、ニコライの元に「日本人にとっては天皇が神より上、伝教学校を辞めます」という学生が来ていた(最相)。
  11. 「日常生活の全てが禅」と「天皇崇拝」の合せ技(釈)。
  12. 杉本五郎の後世への影響(吉本隆明や奥野健男、城山三郎『大義の末』など)。
  13. 動き出した宗教体系は「なかったこと」にはできない=亡くなった人がいることで、「なかったこと」にはできない(釈)。
  14. 「戦友会」のエピソード(最相)。
  15. 磯辺/美津子/木口/沼田らの訪印(『深い河』)。宗教多元主義。
  16. 美津子と大津の関係に注目。美津子に棄てられた大津は、「あの方」からの「おいで」という声を聞く(『深い河』)。玉ねぎ。
  17. 意志(わたし「が」)と「与格」(=わたし「に」)(中島)。
  18. 全てが受動態になる(最相)。
  19. マザー・テレサ(最相)。それぞれの「ガンジス河」を探す。
  20. 愛の真似事/祈りの真似事(釈)。信じる宗教/行う宗教、感じる宗教。
  21. セルフ・カウンセリングとしての墓参した寺院の焼失(伊集院)。
  22. 「人間の河があることを知った」(美津子)。「それぞれの辛さを背負ってこの河で祈っている」「その人達を包んで河が流れている」。
  23. 「信仰とは90%の疑いと、10%の希望」(最相)。
  24. 二人の朗読(瀧内公美)、特に黒田大輔さんの凄み。

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以上を、考えるヒントとしていただけましたら幸いです。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!