考える冒険

※「信ずることと、知ること。」から引っ越してきました。

【マチナカ読書会】レジュメ『生きづらい明治社会』⑤ 第5章

こんにちは。

今日は午前中に一件レジュメを既に公開しているのですが、なるべく早いタイミングで全巻についてのご案内を完結させたくて、二件目に取り掛かりました。このブログ記事では、第5章を取り扱います。どうぞおつき合いください。

 

 

第5章 競争する人びと―—立身出世

小見出し一覧

日清戦争
②地租の増税と地方利益誘導の政治
③貧民救助論争
④逃れられない「わな」
⑤立身出世の時代

※ 上記の①~⑤の番号は、ブログ作成者が便宜的に割り振ったものであることをお断りしておきます。

本章の概要

  1. 日清戦争(1894~95年)により、財政規模が一気に拡大。約3億円もの賠償金。戦争以前の財政規模は8000万円程度だったところに、「ボーナス」がもたらされたようなもの。
  2. 拡大した財政規模は、主として軍事費に当てられ、生活のためには回されなかった。軍事費の増強は、三国干渉などに象徴されるように、欧米諸国の警戒を招いた。
  3. 産業の育成、インフラ(交通網・通信網)の整備にも力を入れた → 結果として、財政が逼迫することになった。
  4. 1899年、地租が3.3%に増税される=衆議院の賛成が必要 → 地方の社会基盤の整備を要求し、政府に承諾させる(しかし、貧困層を助けることには回されなかった)=「地方利益誘導」。
  5. なぜ貧困層が手当てされなかったか。
    1. 制限選挙貧困層には参政権がない。
    2. 女性の参政権がない。
    3. 社会基盤の整備は、富裕層を利することとなった。
  6. 末広重恭「貧民救助論」=貧困者を救護するのは社会、なかんずく政府の義務。
  7. 肥塚竜「非貧民救助論」 → 1881年東京府会で貧民対策が削減され、「施療券」制度が廃される。
  8. 「成功者」が動かす社会になっていった。
  9. かなり無理をしないといけなかった明治社会 → しわ寄せ=弱者に。とりわけ、女性にしわ寄せが行った。

まとめ/感想

  1. 現代社会の「ひな型」が、相当程度準備されていることがうかがえた。昭和の対戦を経てもなお、それは変わることなく続いている「連続性」を強く感じる。
  2. いわゆる「司馬史観」をほぼ否定するようなことになっている。痛快。
  3. 読書メーター」の過去ログを見ると、2016年に松沢さんの編著を読んでいたことがわかった。参考までに掲示しておきます。再読のため、図書館に手配中。

 

 

高度成長が戦時動員体制の問題点を覆い隠してしまい、その延命に一役買っていたこと。それが、80年代以降問題となって噴出していることを、ざっくりと理解できるが、データや年代などはきちんと書き込まれており、手元に置いておきたい一冊となった。「われわれ(=われ・われ)」とは誰であり、どういうことなのかについての「定義」と「再定義」が必要であるとする。弱者の間に楔を打ち込み、対立させるようではならない。対立から「共通の政治」が模索されることの理由であると本書では述べられている。

          *       *       *

このレジュメはここまでといたします。次章以降(第6章・7章等)については、ま他改めて起稿いたします。お読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!