考える冒険

※「信ずることと、知ること。」から引っ越してきました。

【マチナカ読書会】レジュメ『生きづらい明治社会』④

こんにちは。

①~③に続けて、23/05/28(日)のオフライン読書会を中心に行う読書会で扱う『生きづらい明治社会』(松沢裕作さん著)のレジュメをお届けいたします。今回は、4章のみを扱います。ぼくとしては、本著の「白眉」の部分と思っていますので、どうぞ最後までおつき合いください。会への参加もご検討くださいますと幸いです。なお、以下にある「小見出し」に振った①~④の数字は、ブログ作成者が便宜的に割り振っていることをお断りします。

 

 

第4章 小さな政府と努力する人びと―—通俗道徳

小見出し

①カネのない明治政府
②地租改正と減税
③通俗道徳
④江戸時代から明治時代へ

本章の概要

  1. 第1章~3章のあらまし。
    1. 景気を悪化させてでも財政を立て直して「近代的な経済の仕組み」をつくってきた、
    2. 貧富の差がとても大きな社会であった、
    3. 困窮した人びとを助けるための政府の施策は限定的なものであった、
    4. 「自己責任」と言って、衆議院は政策を変えようとはしなかった。
  2. 上記の理由として「政府にはカネがない」と言い募ってきた。では、なぜ「カネがない」のか?
  3. 明治政府の誕生=慶応3年12月9日(=西暦1868年1月3日)。これは実質的には「軍事クーデター」であった。
  4. 大政奉還(慶応3年10月)されたものの、朝廷側には支配のための組織・ノウハウ・軍事力・財源のいずれもがなかった。
  5. 徳川慶喜の「ねらい」=いったんは大政奉還するが、新政権の中で実権を握ろうとしていた → 大久保利通薩摩藩)、岩倉具視(公家)らが、慶喜の「ねらい」をくじくためにクーデターを起こした=京都御所を封鎖、慶喜らの勢力を排除、「王政復古の大号令」、新政権を樹立。
  6. 戊辰戦争=新政府と旧幕府勢力との間の内戦が勃発(1868-69年)。新政府への支持を表明した各藩の軍隊が実働部隊=軍費は各藩が負担。不足分は、新政府が大阪商人から借り上げ・取り上げ。
  7. 1869年(明治2年)、東京に遷都しているが、各地に「藩」は存続していた=年貢制=各藩の収入だった。新政府の収入=ほぼ旧幕府の直轄地からの収入だけ。
  8. 1871年明治4年)7月、廃藩置県(=全国を政府の「直轄地」とする改革)が断行される。これも、ほぼ「クーデター」。
  9. 税制を統一する必要があった=地租改正(測量、収穫量の算定、地価の特定)1873~78年ごろまで。
  10. 地租=当初3%だったが、1877年1月に大久保利通主導で2.5%に引き下げられた ← 士族、農民らの反乱・蜂起。
  11. 要するに、新政府は人びとからの「信頼」を勝ち得ていなかった=高い税率負担を要求できなかった。
  12. 信頼を得るための積極的な経済政策(大隈重信ら)=大量の紙幣の発行=インフレ発生。
  13. 大日本帝国憲法が公布されても事情は変わらなかった。「元老」たちと、新議会(自由民権運動)との対立。
  14. 「民力休養」=減税を求める議会に予算が削減されてしまう=「小さな政府」にとどまり続けていた結果、公的な援助が期待できず、「ひたすら自分でがんばる」しかなかった。
  15. 「通俗道徳」(安丸良夫)が大きな意味。貧困は本人の努力不足という認識が広まっていた。「勤勉」「倹約」「親孝行」が「良いおこない」とされていた(=特段の根拠がないので「通俗」)。
  16. しかし、そうすれば「必ず」よい結果がもたらされる保証は「ない」=偶発的な出来事は人生にはあるため。
  17. 江戸時代後期に「通俗道徳」が広まる=市場経済の拡大、生活の不安定化。
  18. 経済的な敗者は道徳的にも敗者であり、自己認識としてもそうなってしまう。
  19. 江戸時代には、通俗道徳一色ではなかった=集団を基本に社会が成り立っていたため。連帯責任。
  20. 明治期に入ってから、通俗道徳の「わな」にはまっていった=貧困層や弱者に「怠け者」との烙印を押す社会が出現。

まとめ/感想

  1. 明治維新」と習ってきたものが、少なくとも2回の「クーデター」によって成り立っていたことがわかった。古来の伝統とか、本来的な姿に立ち返るというものではなく、それはまさしく、「イデオロギー」であった。
  2. ぼくらの時代は、近現代史は学年末になってしまい、「あとは自分で読んでおいて」的な扱いで、疎かにされていたと言っていい。「実態」を知ることは、とても有益だった。

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今回の記述はここまでといたします。当初4章と5章を同時に扱う予定でしたが、4章だけで予想していた分量を超えてしまったので、5章は別建てといたします。ご了承ください。最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。それではまた!