考える冒険

※「信ずることと、知ること。」から引っ越してきました。

100分de名著『古今和歌集』~①めぐる季節の中で・視聴之記

こんにちは。

今朝方、Eテレ「100分de名著」再放送の録画、『古今和歌集』の第1回放送分を視聴いたしました。解説は国文学者の渡部泰明さん。たいへん優れた回だったので、その印象を記しておきたいと思います。

 

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まず、「仮名序」から。

やまと歌は人の心を種として、よろづの言の葉とぞなれりける。世の中にある人、ことわざしげきものなれば、心に思ふことを、見るもの聞くものにつけていひいだせるなり。

 

「ことば」を、「種」「葉」と、植物との連想で描いているのがいいと思いました。これについては、中学国語の教材で取り上げられていた、大岡信さんのエッセイが思い起こされます。

つまり、染織家の志村ふくみさんの『一色一生』での桜の色を染めるエピソードの引用を用いて、「思い」と「言葉」との関連を綴ったものです。

桜の(花びらの)色を染め出すには、花びらを用いるのではなくて、冬を経て芽吹く前の枝の皮から染め出すのだということから、人の「思い」も、発せられた言葉だけではなくて、その発せられる前の状態、桜で言えば、枝の皮の状態を豊かにすることがむしろ大切であるとしていたエッセイだったかと思います。私は今回の放送を見ていて、この大岡さんが書かれたエッセイは、『古今集』の伝統を、完全に踏まえているのだなと感じ入りました。

今回の放送は、解説やそれに対する伊集院さんのコメント、アニメ、音楽、朗読、セットや照明のいずれもがすばらしい出来でした。残りの三回も楽しみです。

【23/11/09追記】

解説の渡部さんが、とてもよい本を出されているので「参考文献」としてご紹介しておきます。